はじめに
素晴らしいキットを制作,販売しておられるrecompile keysさん,自作キーボード関連の製品を手広くてがけておられる遊舎工房さんに感謝します.
というわけで完成しました.Choco60です. pic.twitter.com/PUYkQRueme
— 院生 (@pudding_info) November 4, 2019
Choco60とは?
recompile keysさんが今年開発された自作キーボードキットで,特徴としては以下の点が上げられます.
- CherryMX互換キースイッチ対応の62キーの分割キーボード
- HHKBをそのまま分割したような配列
- アンダーグロー非対応
- アクリルプレートサンドイッチマウント
詳細は以下の記事をご覧ください.
最上段の配列を削った40%キーボードのCocoa40という姉妹モデルもあります.
どこで買える?
遊舎工房で委託販売されています.また,イベントへの出展時に少数頒布されている場合もあるようなので,公式のTwitterアカウント(@recomplie_keys)をフォローするのが良いと思います.
売り切れになっていることが多い人気のキーボードキットですので,欲しい人はTwitterアカウントをフォローしてツイートの通知をオンにしておくと良いと思います.
なぜChoco60?
以前まではMint60を使用していました.
これはこれで大変良いキーボードキットで,一番最初にこれを経験できたのは大変幸運だったと感じています.しかし,上の記事中でも言及しているように,バックスラッシュやチルダ,バックスペースの位置がデフォルトだと合わず,HHKBライクにキーマップを変更して使って居ました.物理的に右上のキー数が足りないため,
という様な使い方をしていたため,しばらくHHKBを触った後に戻ってくると,混乱してESCの代わりにチルダとか,チルダの代わりにバックスラッシュとかを乱発したりするようになってしまいました*1.
研究室ではMint60,バイト先と家ではHHKBを使って居るため,できればHHKBに合わせたいところです.
- 耐久性と信頼性の観点から,仕事で使う道具はHHKB ProfessionalのUS配列が良い(Type-Sだとなお良い)
- でも分割キーボードは身体が楽なのでプライベートではなんとかしたい
- HHKBを単に二つ並べても,Fnがもう片方には伝播しないので難しい
- じゃあ分割キーボードでHHKB配列だ!
となるのは当然の流れだと思います.地味にHHKB配列は通常のUSともそこまで大きく乖離しないので,MacBookを使っても,ESCやチルダなど一部のキーを除けばちゃんと打てるのも個人的にはポイントが高いです.
キースイッチやキーキャップなど
recompile keysさんが技術書典で頒布された冊子Learning Custom Mechanical Keyboardを参考に,個人的にはリニアよりもタクタイルの方が好みだったため,以下の様な選択になりました.全て遊舎工房で購入することが出来ます.
- キースイッチ:ZealPC Zilent V2 62g
- ハウジング等の潤滑:Tribosys 3203
- スプリングの潤滑:Krytox GPL 105
キーキャップは当初JTK HyperFuseを検討していたのですが,お金が無くて手が出ず,次点で検討していた以下のキーキャップと同等の物が遊舎工房の店舗にあったのでこれを購入しました.
キースイッチの潤滑
具体的な方法は下記の記事が大変参考になります.
キースイッチオープナーは下記の物を注文しました.
素材はMJFのPA12GBです.エクスプレスサービスを利用したので通常注文はわかりませんが,注文してから4日目に手元に届きました.
初めてDMM makeのお世話になったんだけど,綺麗なもんだなぁ.
— 院生 (@pudding_info) November 2, 2019
キースイッチオープナーです. pic.twitter.com/OsqWPMh0ml
後はAmazonでマイクロアプリケーターを買いました.ルブステーションは使用しませんでした.感想としては「これを1日でやりきるスケジュールにした自分をひっぱたきたい」です.
ホームポジションの目印を作る
このキーキャップはFキーとJキーの位置に触って分かる目印が付いていません,個人的にはかなりこれに頼っているところがあるため,自作することにしました.
作り方は道具さえあれば難しくなく,UVレジンとUV照射器を使い,FキーとJキーに少しだけレジンを垂らして固めるだけです.少なくとも頑張って剥がそうとしてもびくともしない,くらいには頑丈になります.耐久性はこれから評価します.
UVレジンを借りてホームポジション用の目印を作った.ちゃんと固まると爪でガリガリやっても取れないし良さそう. pic.twitter.com/1yLTIIUY7t
— 院生 (@pudding_info) October 31, 2019
遊舎工房の店舗では他に
- 瞬間接着剤とラインストーンを使う
- 虫ピンを熱して刺す
などを紹介していただけました.ありがとうございます.
作り方
基本的には以下のサイトの通りです.キットにも特に説明書等は付属しないので,これを見てさっぱりわからんという人には難しいと思います*2
1. ダイオードを基板に刺す
キットの中身からまずは基板とダイオードを取り出します.適当にニッパで切りながら,基板に刺していきます.僕は指で適当に曲げながら差し込んでいきましたが,汚いので出来ればリードベンダー*3とかを使った方が良いです.
また,基板から浮いてしまうとスイッチと干渉するため,足を折り曲げるだけでなく,マスキングテープを使って固定した方がやりやすいです*4.足を先に切る派,半田付け後に切る派がいるらしいですが,どちらの場合でもニッパは小さい方がやりやすいです*5.
2. TRRSジャックとリセットスイッチのはんだづけ
本家の説明が少しわかりにくいのですが,Choco60というロゴのある方が表面で,recompile keysというロゴのある方が裏面になります*6.ダイオードは表面から付けて,裏面からはんだ付けしたことになります.
3. スタビライザーを装着
これは絶対lubeした方が良いことが経験的に分かっているので,少し過剰なくらいlubeしました.高い潤滑剤を使うともったいないので,Super lubeで十分です.それ以外には特に工夫はしていません.
4. 表側アクリルプレートを装着
先に表になるアクリルプレートを装着するのですが,順番的に先に3mmのスペーサーと8mmのネジをアクリルプレートに固定すると楽です.
短い方のネジでは明らかに長さが足りないのですぐ気付くと思います.長い方のネジを使って固定します.
これを基板の表面側(ダイオードのある側)から,各ネジの位置を合わせてはめ込み,裏側から長い方のスペーサーで固定します.無理に硬く締めると割れる可能性があるので,対角線上から順に少しずつ締めましょう.
5. キースイッチをはめ込んではんだ付け
少し押し込んで固定することになるのですが,このときアクリルプレートを一緒に押し込まないように注意しましょう.割れます.
後は裏面からはんだ付けするのですが,このときキースイッチが浮き上がっていないか確認しましょう.キーキャップを付けたとき,仕上がりが凸凹になってしまいます.
6. ProMicroをはんだ付け
最近のChoco60にはコンスルーが付属しているのでこれに準拠します.
ProMicroを裏向けにしてかぶせます.スペーサーの高さから分かるとおり,かなりギリギリです.少し浮かせてしまうと,簡単に干渉します.気をつけてはんだ付けしましょう.
7. ボトムプレートを装着
裏面からボトムプレートを装着し,ゴム足を貼り付けます.僕はコンスルーのピンとボトムプレートが少し干渉してしまい,若干たわんでいます.締める際は対角線上から順に,少しずつ締めていき,大丈夫か確認しましょう.
8. キーキャップをはめる
裏返して全てのスイッチにキーキャップを装着します.今回のキーキャップセットには合うスペースキーがなかったため,Shiftで代用しています.「-」と「=」が入れ替わっているのはこれを書いている最中に気付いて直しました…
ファームウェアを書き込む
Mint60はデフォルトでファームウェアが焼かれたProMicroが同梱されていたのですが,こちらは自分で書き込んでからで無いと動作確認もできません,幸いビルド環境を持たない人のために,デフォルトのhexファイルが頒布されているので,こだわりのない人はこれを使いましょう.
https://qmk.fm/compiled/choco60_default.hex
Dockerでビルド
前回の記事から少し更新があり,QMKが公式のDockerコンテナを出しました.少し使い勝手が違うので,紹介します.
# 自分でキーマップを書く人向け $ git clone --recurse-submodules https://github.com/qmk/qmk_firmware # 適当にキーマップを書く $ KEYMAP_NAME=キーマップ名 $ cp -r qmk_firmware/keyboards/choco60/keymaps/default qmk_firmware/keyboards/choco60/keymaps/${KEYMAP_NAME} $ vim qmk_firmware/keyboards/choco60/keymaps/${KEYMAP_NAME}/keymap.c # Dockerコンテナにクローンしたリポジトリをマウントしてビルドする # qmk_firmwareディレクトリまでの絶対パスを自分の環境に置き換える $ docker run --rm \ -v $PWD/qmk_firmware:/qmk_firmware \ qmkfm/qmk_firmware \ make choco60:${KEYMAP_NAME} # .hexファイルができる # ls -l | grep hex -rw-r--r-- 1 pudding staff 45333 Nov 4 13:50 choco60_pudding.hex
avrdudeで書き込み
最初に,macOS Catalinaの人はこちらを読んでください.
それ以外の人は,普通にavrdudeで書き込みが出来ます.裏面のリセットスイッチを押し,以下のコマンドを実行します.
$ sudo avrdude -p atmega32u4 -c avr109 -U flash:w:choco60_${KEYMAP_NAME}.hex
使ってみた感想
やはり慣れている配列というのは素晴らしく,新しいキーボードなのにすぐに手に馴染みます.キースイッチをタクタイルにしたのも個人的にはかなり正解だったと感じていますし,リニア軸に馴染めなかった人は検討してみると良いのではないでしょうか.作る上でもそんなに難しい箇所はなく,作りやすいキットだったと感じています.lubeしたり,macOS Catalinaでファームウェア書き込みするために調べまくっていた時間の方が,はんだ付けしている時間よりはるかに長かったです.
本当は家用にもう一台欲しいのですが,これ一台を作るために(いくら諸々の初期投資費用がかかっているとは言え)既にHHKB Professionalを2台くらい買える金額になり始めているので,ちょっと難しそうです.
まとめ
- 写真はちゃんとミラーレス一眼で撮れば良かった…
- Choco60はHHKBをそのまま左右に分割したような自作キーボード
- 作る上で難しいところは特になく,初心者でもおすすめできる
- macOS Catalinaはまだちょっとやめておいた方がいい
この記事はChoco60 + Zilent V2 62gで書きました.もう少し軽いタッチでも良かったので,リーフもlubeして良かったかも.